カトウノリキ | Gaucho

１９世紀終わり頃書かれたマルティン・フィエロという詩をご存知だろうか。変わりゆく社会に翻弄されながらも、ガウチョとしての誇りを決して捨てなかった男の人生物語だ。平易な言い方だがそこには現代人が置き忘れてきた心があった。では現代のガウチョはどうであろう。短い旅で彼らの心の中まで僕には量り知ることはできない。しかし、残酷なまでに限りなく続くパンパ（草原）の中で馬を操り、獰猛な牛達を追う彼らの情景は、マルティン・フィエロの世界を今でも思い起こさせる。牛の嘶きや馬の駈ける音、むっとする風の香り、泥の感触、そんなものをプリントで再現したかった。